NTCサーミスタによる測温回路とパラメータの選定


サーミスタは,温度により抵抗値を変化させることにより,温度センサーとしての機能する素子です.NTCサーミスタにおける温度と抵抗値の関係は,

     Rth[Ω]: Tにおけるサーミスタ抵抗値
B[K]: B定数
R0[Ω]: T0における基準抵抗
T0[K]: 基準温度
T[K]: サーミスタ温度

およそ,上式の関係があります.この関係をグラフに示すと次の通りです.

式中のBはB定数と呼ばれ,サーミスタの温度に対する感度を示します.B定数が大きいほど温度変化に対する抵抗値の変化が急峻で,測温される温度が狭い場合やある一点のみである場合に有効です.

反対にB定数が小さいほど温度変化に対する抵抗値の変化が緩慢で,広い温度範囲の測定に適します.といってもB定数の選択範囲は狭く,3000〜5000[K]くらいが一般的です.

サーミスタを使った測温回路は右図に示す,定電圧源Vpに単にプルアップ抵抗を介しNTCサーミスタを接続した系が一般的です.

この系における温度とVthの関係について,例を下図に示します.

このグラフから,温度から電圧Vthへの変換感度について考えます.たとえば,上図のような特性を持つ系で100℃以上を測温範囲と定めるなら,温度から電圧Vthへの変換感度は極めて低いことになり設定としてはNGです. それに対し,45℃を中心に±20℃位の範囲では,温度から電圧Vthへの変換感度は高く精度良く測温できることになります.

ここで着目した温度から電圧Vthへの変換感度は,上図の曲線傾きに対応しています.そこで上図曲線傾き(微分 dVth/dT )波形は下図の通りです.

温度から電圧Vthへの変換感度は,変換ゲインとも言いかえることができ,測定温度範囲において本来の精度を得るために,このゲイン(感度)をなるべく(スカラーで)大きく確保する必要があります.

具体的には測定温度範囲の中心付近にゲインのピークが来るように設定し,測定温度範囲の上限,下限のゲインが同値になるよう設定します.一般に,測定温度範囲およびサーミスタ条件から最適プルアップ抵抗値を求める場合,代数的に導くことはできませんので,厳密に設計する場合にはこのページに記載するようなツールの利用が便利です.

ただし,現実のサーミスタのB定数は一定値ではなく基準温度から高温側,低温側に乖離するほど変化することも知っておくことが重要です.本ツールではB定数一定値におけるシミュレーションで,得られる結果は目安となります.実際の設計では,メーカのデータシートを確認の上さらに実機にて確認することが必須です.

実際測温の仕様としては,低温側と高温側の2点のみ精度良く測定したいという要件は多いと思います.たとえば,バッテリー充電における低温不活性時の保護や高温時の保護など中間の測温精度が不要である場合など. そのようなケースでは,上系では測温範囲において最も精度の悪い2点を使うことになってしまいます.この2点に高精度を求める場合には,下図のRの切りかえの系を紹介しておきます.

低温測定時にはSWはオフで,これまでの系と同様にR1とサーミスタの系,高温測定時にはSWはオンで,R1とR2のパラレルの合成抵抗とサーミスタの系となります.高温測定時(SWオン時)には,SWのオン電圧をVpから差し引いてそれぞれ計算できます.本ツールで求められるプルアップ抵抗値はR1//R2の合成抵抗値になります.(E系列抵抗による合成抵抗自動計算はこちら